「keniti3545」since74 小さな窓:2014.11月4日曇り12℃「東日本大震災」「311フクシマ」1415日 今日の一題「弱者に寄り添う <心と姿(行動)三様>」

*「東日本大震災」「311フクシマ」1415日

*線量測定本日「11月4日」


データ 「グループ1」

先ず前週(10月28日)の測定値を示す:我が家屋敷内と周辺 5点 (此処には毎回高位値2つを提示している)

東:0.18 0.14μSv/h 西:0.19 0.16μSv/h 南:0.43 0.39μsv/h 北:0.16 0.16μsv/h

M :0.52 0.50μsv/h


全体のMaxは0.52μsv/h

   5点の総平均値=0.23μSv/h


「11月4日」の 測定値      


東:0.28 0.19μSv/h 西:0.18 0.14μSv/h 南:0.39 0.36μSv/h 北:0.14 0.12μSv/h

M :0.57 0.56μSv/h


全体のMaxは0.57μSv/h


   5点の総平均値=0.24μSv/h


・・・・・・・・・・・


 データ 「グループ2」 <児童公園の測定 「5点」:各定点の平均値>  


 各定点 6回測定の平均 単位はμsv/h (11月/4日 火曜日)  


東辺:公園内、外周東辺 楓根元 0.19  

南辺:公園内、外周西辺 楓根元 0.67(maxは0.83μSv/h)

西辺:公園内、外周西辺 樹木根元 0.25

北辺:公園内、外周北辺 樹木根元 0.13

E :児童公園(グランド中央部) 0.14


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データ 「グループ 2」


10月28日 前週の測定値 (此処には毎回高位値2つを提示している)  

東:0.23 0.19Sv/h 西:0.43 0.34μSv/h 南:0.86 0.85μsv/h 北:0.16 0.14μsv/h

中央:0.21 0.19μsv/h


全体のMaxは0.86μSv/h


  5点の総平均値=0.29μSv/h



11月4日の測定値

東:0.25 0.23μSv/h 西:0.30 0.30μSv/h 南:0.83 0.72μsv/h 北:0.21 0.16μsv/h

中央:0.19 0.14μsv/h


全体のMaxは0.83μSv/h


  5点の総平均値=0.27μSv/h


◎.今週も、「1.00」μSv/h超えは出ていないが、平均値が下降現象にあるとは言えない




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*今日の一題 「弱者に寄り添う <心と姿(行動)三様>」


ご紹介記事一つ目からお断りですが、「女性を弱者と表現」しても良いのか?考えてしまいましたが、
 大辞林の、次の解説を取らせて頂き、活用することにしました。
【社会的弱者】障害者・高齢者・女性・子供や,低所得層・不熟練労働者・零細な農漁民など,社会の中で弱い立場にある人

[1]
特集ワイド:続報真相 座談会 「女性活躍」の違和感 なぜ?

毎日新聞 2014年10月31日 夕刊 女性が活躍できないよりは、できる社会の方がいい。でも、安倍晋三内閣に女性活躍担当相が置かれ、「女性活躍推進法案」が閣議決定されても、「女性活躍」という言葉に違和感を感じてしまうのはなぜ? 社会学者で詩人の水無田気流さん(44)、反貧困ネットワーク世話人で作家の雨宮処凜さん(39)、政治学者の岡田憲治さん(52)が語り合った。【まとめ・小国綾子氏、写真・武市公孝氏】

 ◇自己責任、さらに重く−−詩人・社会学者、水無田気流さん

 ◇切り捨てられた思いがする−−作家・雨宮処凜さん

 ◇「本音は経済成長」見える−−政治学者・岡田憲治さん


 −−「女性活躍」という言葉に、違和感があるという声が出ています


詩人・社会学者の水無田気流さん
 水無田 女性に目が向いた点は評価すべきですが「女性活躍」の語には違和感を覚えました総務省の「社会生活基本調査 生活時間に関する結果」をみると、外で働くだけではなく家事や育児など無償労働を含む労働時間の合計は女性の方が男性よりも長く、逆に睡眠時間は短い。学校のPTA活動などを通して地域社会に貢献しているのも主に女性です。

 一方、年間を通じて給与所得がある女性でも、その約7割が年収300万円以下です。つまり、女性はすでに活躍しているのに、社会がその活躍に見合う評価をしてこなかった。社会の側の問題が大きいのに、「女性活躍」なんて言われると「女性が自己責任でもっと頑張れ」と言われた気がします



作家の雨宮処凛さん
 雨宮 最初に「女性活躍」と聞いた時、すごく変だなと思いました。「男性活躍」なんて言葉、使わないじゃないですか。「男性が輝く」とも言わないでしょう



政治学者の岡田憲治さん
 岡田 「男女平等参画担当大臣」でいいのに、なぜ「女性活躍担当大臣」にしたのか。そこを考える必要があります。安倍首相や有村治子・女性活躍担当相は、選択的夫婦別姓に反対するなど、復古的な家族観を持つ政治団体日本会議のメンバーです。有村さんは妊娠中絶にも反対。安倍政権の多くの閣僚が3年抱っこし放題、内助の功で家庭を守るといった古い家庭のイメージを抱いている。「女性活躍」と整合性がない。そこがうさん臭いんです

 −−法案では2020年までに「指導的地位にある者に占める女性の割合を3割にすること」を目指すと明記されています。これは多くの女性を勇気づけたのでしょうか

 雨宮 全然。現実には、働く女性の約6割が非正規雇用で、単身女性の3人に1人が貧困で、シングルマザーなど1人親世帯の貧困率は5割を超え、65歳以上の単身女性の半分が貧困なんですよ。

 政府がまずやるべきことは、一番弱い立場の人たちの底上げをはかることでしょう? それなのにこの法案が「活躍」を促す対象の女性のイメージは、高学歴で正社員で時間のやりくりも上手で健康で、子育てにも前向きなスーパーウーマン。年収700万円以上、上位3%の女性のための法案に見えます。

 これを自分のための法律だって思えた女性が何人いるんでしょうか。むしろ、切り捨てられた思いになった女性が多いと思う。「活躍を期待される女性の枠に私は入らない」「弱者として不利益を被ってきた女性のための法律なのに、実はその法律の枠からも私は漏れるんだ」と


 岡田 私自身が子育て中なので幼い子を持つ母親の悩みをよく聞きますが、「女性活躍」では解決できない悩みばかりです。公立保育所は待機児童が多くて民間の高額の保育所に入れるしかなく、パート代が保育料に消えてしまうと嘆く人。介護を抱え、家にがんじがらめにされている人。貧困ぎりぎりで、将来の展望など持てない若い母親。

 むしろ彼女たちが気にしているのは活躍法案より配偶者控除の行方です。安倍首相は「103万円の壁」ゆえ既婚女性はフルタイムで働かないと説明しますが、周囲の幼稚園ママたちは「ちゃんちゃらおかしい」と言い放ちます。「一度退職したら非正規雇用しかない」「子育てで、長時間労働できないのに」と。「103万円の壁がなくなったからもっと働こう」なんて思う人はあまりいないでしょう。

 水無田 この国では女性は子供を産んだ途端、低賃金職になってしまう。経済協力開発機構OECD)の調査では子供を持つフルタイム労働者の男女賃金格差が一番大きいのが日本。正規雇用者同士の男女賃金格差は縮小しつつありますが、子どもがいる女性は同年齢の男性の4割以下しか賃金をもらえていない。子供がいると長時間労働ができず、出世レースから外れる。日本では、家事や育児を妻に丸投げできる男性以外は「周辺労働者」になるしかない

 雨宮 安倍政権のいう「活躍する女性」のパートナーの男性像が想像できないんです。家事や育児をちゃんとやるのかな


 岡田 法案には、男性も育児や介護に参加できるよう時短を促進するとありますが、具体的な道筋は書かれていない。2世、3世だらけの政治家は、自分の父親が家事をする姿を見たことがなく、「女性活躍」を支える夫像など見えないのではないか。

 −−「国から活躍しろと言われるのが嫌」とも聞きます。

 岡田 「女性活躍」と抱き合わせで議論が始まった配偶者控除の廃止は、財務省の悲願です。厚生労働省はパート労働者から社会保険料を取ることも検討し始めている。安倍政権の「女性活躍」は本人の幸せではなく、国家の成長戦略で、人口減少時代の労働力確保が目的だという政府のホンネを、女性たちが看破しているのではないか

 雨宮 派遣労働の期限を事実上撤廃する労働者派遣法の改悪もそう。派遣で働く人の6割が女性です。このままではさらに女性の雇用は不安定化し、「安心して働ける」環境とはますます程遠くなる。派遣法改悪は「女性活躍」と矛盾します。

 岡田 そもそも、男女平等は憲法で守られている。経済成長のために実現するものではなく、たとえ国の成長の足かせになろうと、実現していくべきものなんです。

 女性活躍推進法案は努力目標ばかりで、罰則規定もない。どう実現するのか、具体的な道筋が何も見えない

 水無田 20年までに、指導的地位の女性を3割にするという。でも、男女雇用機会均等法以降、総合職の女性がどの程度就労継続できているかを調べた調査があります。10年間で約7割は退職し、2割は一般職に転換する。出世するのは残りのたった1割。出世したその女性たちは同年齢階層の男性よりも長時間働いている。そんな働き方を3割に、というのはますます女性を苦しめるだけです。

 雨宮 私を含むロスジェネ世代の目には、この法案の描く「活躍」はリアリティーのない絵空事にしか見えませんね。40歳前後を迎えたロスジェネ世代は、雇用が不安定だったり貧しかったりすることで、結婚など考えられず、女性であれば出産をあきらめる時期に直面しているんです。

 でも、一部の「活躍」できている女性も幸せには見えない。以前、味の素のテレビコマーシャルがネット上で話題になりました。働く母親が自転車で保育園に子供を預けに行き、仕事に行き、働いて、また保育園にお迎えに行き、家に帰って食事を作って……。次の日に過労死するんじゃないか、って。

 水無田 それが今の女性のリアルです。日本の母親は「時間貧困」。ライフコースも「30歳までに結婚し、出産までに仕事のキャリアを積み、35歳までに出産する」という理想モデルを実現するためには、20代半ばから30代半ばのわずか10年間が勝負です

 岡田 この国はいったいいつから何もかもが自己責任に還元されるようになったのか。女性が活躍できる社会を実現するには、指導的地位の女性の数を増やすだけでなく、多様な家族のあり方を認めることからはじめなければいけません

 水無田 本当に。少子化を克服した先進国は、事実婚など多様な家族のあり方を認めています。要は子供の絶対平等を守る。それが未来の平等を守ることだからです。

 今、女性の間の格差がどんどん広がっています。それを放置しながら「女性は子供を2人以上産んで、家事も育児もこなしつつ、仕事も続けて活躍しろ」と言われても、究極の勝ち組女性ではない、普通の女性が「活躍」できる道筋は見えません

 「活躍」できない女性は自己責任と言われ、「だから女性活躍なんてダメ」という結論にしないためにも、女性が生きやすく能力を発揮しやすいよう社会環境を変えていく必要があります


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(keniti3545)
*.確かに、この内容ぐらいは国民が「男女を問わず認識しなければならないこと」でしょう。そして、知らしめる方法をもう少し「一般の男女間にも議論」させる事が必要なのでしょう? また、その土台の上に立っての「この場での議論」であったのであれば何ら方法論も示されて居ないもどかしさを感じます

*.仕組み・枠組み・各論の方法論 政府お得意の委員会を設置してたたき台を造らせればいいそれを元に一般国民の参加による議論をするべきだと思います。結論ありきの座談会などしくんでもはっきり言って何の役にも立ちませんね!


◎.結論を言ってしまえば、男性がもっと家事を手伝うこと、どうしたら有効な家事手伝いが出来るかを議論するべきなのではないのでしょうかね?今はまだ。(この辺はまるっきりブログ仲間の受け売りでもありますが・・・)
 上の「座談会」の結びを借りますが、 <「活躍」できない女性は自己責任と言われ、「だから女性活躍なんてダメ」という結論にしないためにも、女性が生きやすく能力を発揮しやすいよう社会環境を変えていく必要があります> ← これがテーマなのではないんですか?! (keniti3545)



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 ■人物略歴

 ◇みなした・きりう

 1970年神奈川県生まれ。立教大社会学部兼任講師。近著は「無頼化した女たち」。1児の母親。


 ◇あまみや・かりん

 1975年北海道生まれ。著書「生きさせろ! 難民化する若者たち」で日本ジャーナリスト会議賞。



 ◇おかだ・けんじ

 1962年東京都生まれ。専修大法学部教授。近著は「ええ、政治ですが、それが何か?」。2児の父親。


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http://mainichi.jp/shimen/news/20141031dde012010002000c.html


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[2]経営者にも望みたい弱者への身の寄せ方です keniti3545

週のはじめに考える 幸せを生む経営革命
東京新聞社説 2014年11月2日

 非正規労働の増大、リストラ、諸々(もろもろ)のハラスメント…人を不幸にする企業が実に多い。そんな間違った経営を正そうとの動きが芽生え始めている


 九月下旬、岐阜県大垣市にあるIT企業の社長、服部義典さん(43)が心待ちにしていた日が訪れた。「人を大切にする経営学会」という名の異色の学会が船出する日。「歴史的瞬間に立ち会いたい」。体調は臥(ふ)していたいぐらい大変だったけれど、都内の設立総会に駆けつけました

世の中を変えたい


 服部さんは生まれつき重度の心臓疾患があります心室と心房が一つずつしかなく、内臓はすべて左右逆の全内臓逆位。心不全は年々進行している。入退院を繰り返しながらも、大学で電気工学を学んで就職活動へ。障害者の就職が今よりもはるかに難しかった二十年前のことです。約二十社回った企業は、どこも健康を理由に冷たく断るのでした。


 運良く親類の会社に勤めることになったが、同じように障害がある知人はだれも就職がかなわない「世の中を変えたい」。自らIT企業を創業し、障害者の働く場づくりと就労支援事業を始めました脳梗塞で三度も倒れ、文字どおり命懸けで続けてきた以来十年、思いを後押ししてくれる学会ができると知ったのでした。


 学会設立の底流にある考えは、こういうものです。《会社は社員らの幸せのためにある。業績はその手段でしかない。業績が目的になれば社員らは犠牲にされ不幸になる》障害者や女性、高齢者を積極的に雇用したり、人を大切にする会社ほど業績もついてくる


 学会は法政大学大学院の坂本光司教授(67)が中心になりました四十年にわたり北海道から沖縄まで七千社以上の企業を見て回り、この「人を大切にする会社ほど業績が良い」との経験則を得た。これを理論化、体系化して世に広めるのが学会の狙いなのです


 坂本教授は設立総会のあいさつで「そのために三つの革命を起こしたい」と話しました


 (1)企業経営を変える革命−経営の物差しは業績や株価、シェアではなく社員や取引先らの幸せ。


 (2)経営学や学者の考え方を変える革命−人を切って当然とか、業績が良くなれば幸せになれるという経営学は間違い


 (3)産業政策を変える革命−国は助成金で政策誘導するが下請けいじめうつ病を生む会社、障害者の法定雇用率を守らない会社は対象から外させる。

徹底した現場主義


 学会には四百人以上と百を超える会社や団体が名を連ねました学者や経営者に加え医師、弁護士、会計士らも。なぜかといえば、企業社会によって生み出された病や争いなどの後始末に当たる必要があるからです


 坂本教授はとりわけ障害者雇用に力を入れているそれは多くの現場体験が突き動かすからです。徳島県の企業を訪れた時のこと。障害者雇用に熱心に取り組むきっかけとなった作文を手渡された。脳障害で両手を合わすことすらできない少女が書いたものでした


 「もしも神様が私の手を自由に動かせるプレゼントをくれたら私は三つのことがしたいです一つめはお母さんの肩をいっぱいもんであげたい二つめはお父さんのいる仏壇に両手を合わせ、お祈りしたいそして三つめはお母さんと一緒に真ん丸なおむすびを作り、ピクニックに行きたいだからどうか神様、私の手を一日だけでいい、自由に動かせるようにしてください


 望んで障害をもつ人はいない。望んで障害のある子を産む親もいない働くことで人に必要とされ、人の役に立ち、そこに生きる喜びが生まれるそれなのに障害者が働く場は絶対的に少ない。賃金の面でもあまりに低すぎる。だから障害者雇用に力を尽くす必要があるのだ、といいます


 だが企業の多くは逃げ腰ですし政府の動きも鈍い安倍政権は「稼ぐ力を高める」と大企業の利益を増やすことには熱心ですが、残念ながら社会的弱者への配慮には見るべきものはありません

経済こそ道徳たれ


 ちょうど一世紀前、「経済こそ道徳たれ」と訴えた人がいます


 五百もの企業や銀行を設立、経営に関わり「日本の資本主義の父」といわれる渋沢栄一彼の最も有名な主張である「道徳経済合一説」がそれです。「道徳が欠けた経済も、また富のない、ただの道徳も、世を済(たす)け民を救うことはできない経済と道徳は一致せねばならない」と説きました。


 私たちは大切なことを見失っていないでしょうか損得よりも正しいか正しくないか得より徳が大事ではないか今こそ正しい経営が広まってほしいと思います。


↓「人を大切にする経営学会」のホーム頁です。後日ご紹介したいと思いますが、お時間ある方はお先にどうぞ。(keniti3545)

http://www.htk-gakkai.org/



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[3]
弱者に身を寄せる:三題目
「バイオリニスト五嶋みどりさん」の活動:「身障者と競演の姿を昨夜のNHKスペシャルを視て!」

五嶋みどりさんをミニウオッチです。国際連合広報センター」の資料より 
http://www.unic.or.jp/activities/un_japan/un_interview/midori_goto/

国連ピース・メッセンジャー 五嶋 みどり さん

今回ご紹介するのは、日本出身者で唯一「国連ピース・メッセンジャー」として国際的に活躍中のヴァイオリニスト、五嶋みどりさんです音楽活動に加え、社会貢献や教育活動に非常に熱心なみどりさんから、音楽が人々、社会、平和にもたらす影響について力強いメッセージをいただきました


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Photo: Timothy Greenfield-Sanders

「プロフィール」

2007年9月「国連ピース・メッセンジャー」就任「Midori & Friends(みどり教育財団)」や「ミュージック・シェアリング(Music Sharing)」、「Partners in Performance(パートナーズ・イン・パフォーマンス)」を中心に積極的な社会貢献活動を展開し、音楽と接する機会が少ない子どもたちに音楽教育プログラムを提供他にも、コンサート活動、プロジェクトの企画、団体の組織や、若い音楽家たちのリサーチやトレーニングのサポートを行うと同時に、南カリフォルニア大学(USC)ソーントン音楽学校の「ハイフェッツ・チェアー」、同学内におけるコミュニティー・エンゲージメント・センターの共同ディレクター、そして弦楽学部長を務める


みどりさんは様々な形の社会貢献に取り組まれていますが、そうした活動に興味を持たれたきっかけを教えて下さい

80年代後半のアメリカでは、政府が芸術一般に対する予算の削減を打ち出し、特に私が住んでいたニューヨークの公立小学校では音楽の授業が削られ、音楽業界で問題になっていました。当時、周囲の大人が話題にするだけで何の行動も起こさないことに単純に疑問を感じ、自分の中で“するべきこと”というミッション的な気持ちが芽生えました。私が個人的に学校を訪問して、子どもたちの音楽教育のお手伝いをするというのでは色々制約や限界があり、活動内容をクラシック音楽やヴァイオリンに限りたくなかったので、「Midori & Friends (みどり教育財団)」を作り組織化しました

子どもたちと一緒に音楽の喜びをシェアしたいという気持ちや使命感が強かった

楽家として社会貢献活動を開始することは容易なことではなかったと存じますが、「Midori & Friends(みどり教育財団)」の立ち上げにはどのようなご苦労がありましたか

まだ音楽の勉強に邁進すべき時期に、その本質から外れているような活動をすることが私の音楽的成長の妨げにならないかと反対する方、体もあまり丈夫でなかったために健康状態を懸念してくださる方、さらに若輩の私が活動することで売名行為と受け止められないかと危惧してくださる方もありました。演奏活動を行いながら、財団という社会的な責任を伴う活動はこなせないのではないかという意見もありました。

un_interview_photo01しかし、いずれも私には納得できる反対理由にはならず、単純に子どもたちに私の音楽を聴いてもらいたい、子どもたちと一緒に

音楽の喜びをシェアしたい、という気持ちや使命感の方がずっと強かったので、反対を押し切って始めました

最近では音楽家による社会貢献活動も盛んに行われるようになりましたが、私がこのような活動を始めた頃はあまり行われていませんでした。アイディアはあるものの、それをどのように具現化していくか試行錯誤を続けながら活動し、多くの方々にサポートしていただいて続けてこられたことに大変感謝しています

音楽は人と人との間のコミュニケーションを広げ、何かを理解し合う第一歩

「ミュージック・シェアリング」などのご活動では、音楽を通して豊かな人間性を育む環境作りの手助けをなさっているとのことですが、音楽がもたらす子どもたちへの良い影響とはどのようなものだとお考えですか

人間性の向上には、音楽に限らず様々な要素が絡み合っていると思います。音楽だけをやっていても必ずしも人間性の向上には繋がらないと思うのです。まず、自分の視点に固執しないこと。自分を一つの枠組みの中だけで捉えずに、色々なことに興味を持ち、挑戦し、視野を広げていくことが大切だと思います。子どもたちが成長していく過程で、音楽を通じ、子どもたちの視野を広げる一助となれれば嬉しいです

本物の音楽に触れる機会の少ない子どもたちが、実際に触れて何かを肌で感じている時の彼らの目の輝きを目の当たりにすると、音楽の力というものを感じます。まず音楽を楽しみ、身近に感じてもらうことが第一で、何かを伝えようとは考えたことがありません。何を感じるかは子どもたちによって違って当然だと思いますので、子どもたちの心の中に何かが残れば大変嬉しく思います。

音楽は人と人との間のコミュニケーションを広げ、何かを理解し合う第一歩になるのではないかと思います。音楽のように何か共通したものがあれば、それをきっかけに対話やディスカッションなど交流の機会が増え、関係が深まっていくと思います

現代社会において、人間や社会のつながりが簡素化するにつれ、子どもたちの想像力や考え方も欠落しがちであると思います。それを補うのに必要なのは、物事を多方面から見つめることだと思います。物事にはたくさんの側面があり、色々な側面から考えることが大切だと思います。これは飛躍した答えになりますが、一つの国を見るにも、地球上のことに何らかの判断を下すときも、多方面から判断することは大変重要なことだと思っています。音楽もその一つの側面になると思っています

みどりさん自身が幼少期に音楽に与えてもらった良い影響とはどのようなものでしょうか

ミュージック・シェアリングの活動の一環として、インドネシアスマトラ島メダンにある寄宿舎を訪れ、子どもたちと触れ合う五嶋みどりさん(2008年12月) Photo: T. Oda練習を通じて持続力や忍耐力、向上心が身につきます。これはヴァイオリンに限らずお稽古事一般に言えることだと思います。


一つの曲を練習しているとき、技術的なことを学ぶだけでなく、作曲者や時代背景などについても勉強するので、興味の対象がどんどん増えていって、好奇心が芽生え、自然に考える力がついたような気がします。今でも、一つのことから次々と疑問がわき、そのたびに図書館に駆け込んだり、大学(現在、南カリフォルニア大学で教えています)の同僚の専門家の教授に尋ねたり、インターネットでリサーチしたりしています。自分の専門外のことにも興味がわいて、視野が広がりますね

ミュージック・シェアリングの活動の一環として、インドネシアスマトラ島メダンにある寄宿舎を訪れ、子どもたちと触れ合う五嶋みどりさん(2008年12月) Photo: T. Oda
ミュージック・シェアリングの活動の一環として、インドネシアスマトラ島メダンにある寄宿舎を訪れ、子どもたちと触れ合う五嶋みどりさん(2008年12月) Photo: T. Oda

音楽を演奏する醍醐味とは何でしょうか

遠い過去に生きた作曲家による作品を演奏することで、その時代背景や作品の偉大さを私と同時代に生きる人たちに伝えられることです。また、私と同時代に生きる作曲家の作品を演奏していくことによって次の世代に私たちの文化を継承できることです

どうして国連ピース・メッセンジャーになろうと決意されましたか

このお話をいただいたとき、これまで長い間音楽を通じて社会貢献活動を行ってきたことを評価していただいたのかなぁと思い、引き受けました。

国連ピース・メッセンジャーに任命される前後で、みどりさんの社会貢献活動に変化はありましたか。

私が国連ピース・メッセンジャーに就任したからといって、今までの行動、活動内容や活動団体の理念には変わりありませんが、“国連ピース・メッセンジャー”という公の肩書きが加わったことによって、社会活動に限らず、プロの演奏者、教育者として、選ばれた人間の持つべき責任の上に立つ者であることを忘れてはならないという気持ちが生まれました

「“ピース(平和)”は“acceptance”(受け止めること)」

みどりさんご自身にとって、「ピース・メッセンジャー」の“ピース(平和)”とは何であるとお考えですか?

un_interview_photo03“ピース(平和)”は“acceptance(受け止めること)”だと思います。“受け止める”とは、自分自身に素直になり、自分を

“accept”する(受け止める)ことであり、そうすることによって心が豊かになり、初めてもっと大きな意味での平和ということが考えられるのではないかと思います

これまでの様々な社会貢献活動を通して多くの方を幸せにされてきたと存じますが、逆にご自身がそういった活動から学ばれたことは何でしょうか

コミュニティー・エンゲージメント活動を通して、普段のコンサート活動では体験できない貴重な経験をたくさんさせていただいていると思っています。人々との出会いや触れ合いはとても刺激になりますし、それらの活動を通してインスピレーションが湧いたり、新しいアイディアが浮かんだりすることもあります。

「学ぶ意欲、働く意欲、幸せな瞬間を持つことも、ひいては現実の貧困から解き放たれる根源」

国連は現在ミレニアム開発目標MDGs)に取り組んでいます。そのなかでもみどりさんは「教育」について強い関心をお持ちだと伺っております。ご自身のご経験から、開発途上国の発展に教育が果たす役割はどのようなものであるとお考えでしょうか

貧困という言葉はつい物質的なものと考えられがちですが学ぶ意欲、働く意欲、幸せな瞬間を持つことも、ひいては現実の貧困から解き放たれる根源になると思います教育の一つとしての「見聞知」が重なって文化が育ち、国が育ち、将来的には物質の貧困から自力で解き放たれる可能性があり、そこに音楽の力が働くと私は信じています

みどりさんは幅広い分野にてご活躍中ですが、そのように様々な活動に取り組めるパワーの源は何でしょうか?

やりたいことをしているので、やりたいという気持ちがとてもパワーになっているのと同時に、周りの人々からいろいろなパワーをいただいていると思います

「子どもたちが一瞬でも抱いている生活苦や将来への不安を忘れ、“希望”を目の当たりにして欲しい」

みどりさんは今後もこれまで以上の社会貢献をなさっていくことと存じますが、どういったことをしていこうと考えていらっしゃいますか

活動の内容は、時代や社会のニーズに敏感に対応していく必要があると思っています。これまで以上に充実したコミュニティー・エンゲージメント活動を日米に限らず世界に広げ、その精神を若い世代の人たちにも引き継いでいくことによって、私個人の活動の理念が世の中に広がるとともに、国連の掲げるミレニアム開発目標(MDGs)が注目を浴び、一人でも多くの方が関心を寄せてくださる結果につながると思います。そうすることがコミュニティーの一員としての私の役割であり、国連ピース・メッセンジャーとしての役割であると感じています。ですので、それを実現するためにも一層の精進に努めたいと思っています。

私が主宰するNPO法人「ミュージック・シェアリング」のプログラムの一つである「ICEP(International Community Engagement Program)」では、これまでにベトナムカンボジアインドネシアを訪問し、国、文化の違いがあっても、私たちの音楽に子どもたちが素直に反応し、瞬間的にでも幸福を感じ、外の世界に目を向けるきっかけとなっていることを実感しました。私たちのできることは限られていますが、子どもたちが抱いている生活苦や将来への不安を一瞬でも忘れ、“希望”を目の当たりにして欲しいと思って活動しています。子どもたちにとっては一瞬のできごとかもしれませんが子どもたちが目覚めるきっかけになればすばらしいことだと思いますので、今後もできる限りアジア一帯の国々を回りたいと思っています。


un_interview_photo04―
これから国際団体などで社会貢献に取り組もうと考えている日本の人々へ、一言メッセージをいただけないでしょうか


自分たちが生きている社会の一員として、自分自身がコミュニティーに何を貢献することができるか常に考え、行動することは、簡単なことではありません。しかし、自分自身の可能性を信じて頑張っていただきたいです



注1:(五嶋みどりミュージックシェアリング)
この法人は、全国の小学校、養護学校、身障者施設、こども病院に在学、入院または通院する子供達に対して、音楽の楽しみを分かち合い、また、音楽を通じて子供達が異文化を学び、自尊心を高め、自己表現とコミュニケーションの新しい方法を見出す手助けとなるよう、クラシック音楽の演奏会を中心とした様々な音楽活動に関する事業を行い、文化、芸術の振興及び子供の健全育成に寄与することを目的とする。




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