「keniti3545」since72:7月25日(水)曇り20℃「東日本大震災」503日 今日の一題「3つのシナリオで遊ぶ暇はない」!

*朝トレ:7時〜8時

 空は晴れないが気持ちいい朝〜が続きます。送電線上お出迎えの「カラス」今日は3羽、少し調べてみました。4、5月頃まで子育て、卵は2から4個ぐらい夫婦は一夫一妻で一生を終える、子供達は営巣の近辺で暫く親たちと共に暮らしているが三月程度で他の仲間と群れで暮らす。となっていました。今は夫婦に2羽の子ガラスとみましたが、4羽の時と3羽の姿を見かけています。こんな良い環境で生活出来て、お前さん達も我れに負けずに幸せ者よの〜。

 今日は声を掛けてもあっち向かない。 日が良いのかな〜家の女房殿も機嫌良かったよ! 関係ないってか〜。今日は神山さん・ジャッキー主従に暫くぶりのお早う御座いますでした。小学校が夏休みに入り朝夕の送り迎えの「パトロール」から開放されているとのことです。本当に毎日ご苦労様です!

 情報が一つ、今年は「猿の被害が」無くてほっとしていたところ「鹿の出没」が激しくなり人家回りの畑が荒らされて大変らしいとのことでした。TVでは中善寺から足尾地区に熊の被害とか、野生の動物達も天候不順の影響で食料不足とは可哀想ではある。人畜に被害がないことだけは願いたい。今日はサギの仲間らしき鳥も見かけ、千客万来でした。見物人が多い割りには走の本数も上がらずいつものB下メニューで朝トレ終了!



*オリンピックの開幕も間もなく・今日の日付が変わる頃にはなでしこジャパンの「予選第一戦」応援しない訳にはいかないだろうし!! 特筆に値するは昨日の一郎選手「涙の電撃移籍」、そしてあの「結果」凄すぎる男です!! そのまた前日(?)の日本プロ野球選手会の勇気ある行動も褒めて上げたいですね。これは「絶対ぶれないで欲しい」は我れだけの願いでは無いと思います。



*「東日本大震災」503日


今日の一題 「3つのシナリオで遊ぶ暇はない」!

 脱原発「0」にするにはどうするか!

「本当の国民の議論を聴取せよ」!

・・・・・・・・・
(keniti3545)
電力が足らない何て二の次、脱原発(依存)への舵を切っておきながら、原発を止めるのが恐いお国の事情なんです。だからと言って事ある毎に国民を人身御供に奉っても良いのですか!!???

我々も良くお浚いをして、〜だから出来ないではなく・だったら「どうすれば良い」のか「知恵を絞りなさい」と政治家への「ハッパ」を掛けなければ成りませんね。 


原発はやっぱり止められません」ではなく、「どうやって止めるか」を考えるのが政治・行政の仕事なんですよ。 「選択肢を3つ用意しました選んで下さい」こんな子供だましで済むと思っているならあなた方はやっぱり「政治屋」でしかありませんよ!! (keniti3545)

・・・・・・・・・・・・


日経ビジネスONLINE


原子力は民間企業では縮小できない

植田和弘京都大学大学院経済研究所教授に聞く 【前編】
山岡 淳一郎   バックナンバー2012年7月18日(水)


 電力・夏の陣、最初にお送りするのは、植田和弘京都大学大学院経済研究所教授へのインタビューである。政府の委員会でフランクにさまざまな「盲点」を突いてきた植田氏に、国民的議論の焦点「三つのシナリオ」の意図、そして原発再稼働を取り巻く実情を訊ねた。

 植田和弘教授は、経済産業省資源エネルギー庁の「総合資源エネルギー調査会」で、「基本問題委員会(見取り図のD)」、「調達価格等算定委員会(E)」の委員、「大阪府市エネルギー環境戦略会議(G)」の座長を務めている。


『電力改革の見取り図・2012夏』
 2030年時点での電源のベストミックス(原発依存度0%、15%、20〜25%の「三つのシナリオ」)、再生可能エネルギーの買い取り価格の検討、そして大飯原発再稼働への対処と、中長期的な電力・エネルギー政策から差し迫った問題まで幅広く、専門的に関わってきた。

 政府の委員会で議論を積み重ねるメンバーの中で、フランクにさまざまな「盲点」を突いてきた植田氏。国民的議論の焦点である「三つのシナリオ」にはどんな意図が込められているのか、そして原発再稼働を取り巻く実情を訊ねてみた。

山岡:まず「三つのシナリオ」のお話からうかがいます。基本問題委員会ではどのような話し合いで、この形にまとまったのですか。

植田:のべ70時間ちかい議論は複雑な経緯をたどりましたが、端的に言うと、政府は脱原子力依存の前提として「40年廃炉、新規なし」と宣言しているのだから、それを数値に落とす必要がある。僕自身、そう発言しました。

 現状の原発の稼動率は70%ですから、40年経った炉を廃棄し、新設しない場合、計算では2030年で依存度13%となります。つまり、「15%案」がこれに近い。それよりも早く脱原発に向かうのが「0%案」。目まぐるしい国際情勢などに対応できるよう、多様な電源が必要という理屈で、原発を一定程度維持するのが「20〜25%案」です。

数字は「結果」であって、目標ではない

山岡:確かに10年、20年先の国際情勢を予想するのは難しいですが、東電福島原発事故を経験して、国民の関心は、原発をどうするかに集まっています。

植田:「そこで数字の議論」を、となるわけやけど、「数字は結果だ」と僕は言い続けてきた。最初から数字を決めるのは、統制経済的やしね。実は、エネルギー・環境会議の「三つのシナリオ」からは外されましたが、第四の選択肢案もあったんです。


山岡:ああ、「電源別のパーセンテージは決めず、市場に委ねればいい」という案ですね。

植田:そうそう。僕の意見も、それに近かった。

植田和弘京都大学大学院経済研究所教授(撮影:行友重治 以下同)


大事なのは2030年の原発依存度のピンポイントの数字ではなく、中長期的に日本の電力・エネルギーシステムをどう転換していくか、です。

 そこを皆さんにも、ぜひ考えてほしい。従来の、莫大なお金と長い歳月をかけて大規模発電所を設ける集中型のシステムか、地域に分散した電源をネットワーク型につなぐシステムを目ざすのか、ここが問われている。

山岡:植田さんのご意見は。

植田:将来への持続可能性原則からいえば、後者がいいと思うな。

第一に、枯渇性の天然資源には限界がありますよ。そこをクリアせんといかん。二つ目は 世代間の衡平とか倫理の問題です。放射性廃棄物やCO2は溜まり続けて、次の世代にツケを残す。これがしんどい。

原発の経済性は「保険」で分かる

 三つ目に地域の受容性。今回の福島で決定的になりましたが、地域に歓迎される電力施設やシステムじゃないと、もう続きません。風力は振動が生じるとか、太陽光は不安定だとか、発展途上の要素はありますが、技術革新の余地も大きい。日本はエネルギー資源に乏しいと言われますが、再生エネルギーは豊富で自前の資源ですので、柱にしていかなければなりません。福島は、もう再生エネルギーに向かって走りだしています。

山岡:その意味では、「三つのシナリオ」はどれも再生エネルギーの割合を30%以上と、自然体で進めば10%にすぎないところを大幅に引き上げています。地域分散型への一歩を踏み出したようです。

 しかし、問題は短期的な経済性です。「コスト等検証委員会」が発表した「発電コスト試算一覧(pdfファイル)」では、原発の値段は8.9円/キロワット時〜と、従来の5〜6円/キロワット時から上げられました。原発は、石炭火力とほぼ同程度、しかし住宅太陽光の3分の1以下。大局的に原発のコストを、どうとらえればいいのでしょうか。

植田:ひとつ指摘すると、原発には損害保険が掛けられません。その現実がすべてを物語っています。


植田:事故リスクは本来、コストに反映されます。空を飛んでいるジャンボジェット機にも損害保険は掛けられている。万一落ちても損害は保険でカバーできます。しかし世界中の原発が損害保険に入れない。なぜかというと、現時点で技術的に十分コントロールできていない。何千回動かしたら、どの程度の事故が起きて、どれだけ被害が出るというのが、はっきり言えないんやね。それがわからないと保険は組めない。保険料を設定できないから、損害保険の対象にならないんです。
で、どうするかというと、多くのケースで「国家」が出てきます。

 そもそも原子力の産業利用は、アメリカのアイゼンハワー大統領が1953年の暮れに国連総会で行った「アトムズ・フォー・ピース(平和のための原子力)」の演説から始まった。軍事利用で原爆の製造に由来する技術だったから、わざわざ「平和のために」と大統領が言ったんです。

山岡:あの演説を受けて、当時、改進党の国会議員だった中曽根康弘氏、稲葉修氏らが、国会で初めて原子力予算を成立させました(拙著『原発と権力』参照)。

そもそも民間に扱えない事業だった

植田:ええ。そして原子力開発が軍から民へとなったとき、一番心配されたのが安全性です。

 民間は技術も未熟、お金にも限りがある。危なくて仕方がない。そこで国は、事故が起きたら、賠償の一定額以上は国が保証をするので、民間は一定の範囲内だけで相互扶助的に保険で対応すればいい、と誘った。

 つまり本来、原発は電力会社という民間企業では運営できないんですよ。国の援助があってこそ動かせるシステムです。「国策民営」というのは、そこを曖昧にしてやってきました。だから、今回の被災者の方々への損害賠償も、何だかぐちゃぐちゃして変なことが起きている。いまの状況では、ある程度以上は国が責任を持ちます、という話をせんといかんのやけど、財務省はいろいろ理由をつけて乗ってこない。だから、東電の生殺しみたいな、変なしくみになってるんやね。

山岡:東電は実質国有化され、原子力損害賠償支援機構で運営委委員長だった下河辺和彦氏が機構を辞めて東電の会長に就任しました。これも「賠償のために厳しく当たる側」から「当たられる側」への異動で、すんなり納得しにくい。

植田:事実上、東電は破産状態です。にもかかわらず生かし続けているのは、除染も含めて、損害賠償を国が払うつもりがないからでしょう。誰かが払わないといかんわけやから、東電に払ってもらおう、と。東電が生きていて、かつ儲からないと払えない。それで電気代の値上げと原発再稼働がでてくる。損害賠償を東電に押しつける限り、それしかない。電気代の値上げ抑制も、甘くなりますね。

山岡:東電に会社更生法を適用して、一度、きちんと始末をつけておいたほうがよかったという意見もあります。東電にお金を貸している金融機関は、大反対するでしょうが……。

植田:僕は、どっちかというと、そっちに近いんです。ただし、会社更生法を適用した場合、問題は東電を経営破綻させると、電気事業法で電力債の優先弁済が義務付けられていることに留意しなければならない。さらに、大切なことが二つある。

 第一に、福島の損害賠償の方法を決めておくこと。それなくして、東電を潰したら大変なことになる。もう一点は、単に潰すのじゃなくて、東電が保有する発電、送配電などの膨大な資産があるわけですから、それを電力システムの改革の方向に沿って活用するビジョンを描くこと。簡単にはいきませんけど、我々の基本問題委員会で託されている新しい「エネルギー基本計画」とは、本来、そういうものでしょう。

山岡:エネルギー基本計画は何度となく書きかえられてきましたが、コアになる原子力発電に国策民営の枠をはめられているために、戦術あれど戦略なし、の印象が強い。

植田:基本問題委員会の第一回会合で、飯田哲也さんがかなり厳しいこと言いましてね。「この事務局に基本計画の見直しをする資格があるのか」と問うたんです。


 資源エネルギー庁の事務局は、福島原発事故を起こした原因者じゃないか、と。そこが責任をとらないまま、原子力委員会原子力安全委員会もそうやけど、原因もはっきりさせないで見直しなんてやっていいのか、と言ったわけや。そこで枝野(幸男)大臣、「そのとおり」と言うたんです。あの人、なかなか見識あるわね。

 それで「しかし」と。それをやりだすと原子力の行政機構の根本的改革をやらんといかん。時間がかかる。その間、基本計画の見直しを遅らせてはいけない。つまり暫定的に物事を決めてしまおうという姿勢を示しました。これが野田首相にも共通している。本当は長期ビジョンが重要なんです。「三つのシナリオ」をめぐる国民的議論は、そのビジョンづくりのスタートと考えたほうがいい。


原発継続」と「電力自由化」の意外な蜜月

山岡:穿った見方かもしれませんが、「三つのシナリオ」と並行して進んでいる電力システム改革、東電の経営や賠償、原発再稼働と安全規制の動きを見ていると、経産省電力自由化に「前のめり」のような感じがします。

 発送電分離に踏み切って、送電網は全国一体の広域化、中立化を進めて一種の社会的共通資本にしたい。その議論は進んでいる。しかし、そのシステム改革と「原発をどうするか」という議論を切り離そうとしている印象がある。

山岡:財務省が事故の処理、賠償を含めて原発を背負うのを嫌がる以上、経産省はうかつに動けない。ならば原発には触らず、できるだけ維持しておいて、安定的な電力量を確保しておきたい。そうすれば、発送電分離にしても、絵図が描きやすい。不安定で、設備投資が必要な再生エネルギーを前提にするより、大きな安定電源のほうが計算を立てやすいですからね。脱原発依存と言いつつ、経産省、官邸も頭をそっちにシフトさせていませんか。

植田:まったく、そのとおりやね。だから「電力自由化」路線と「原発維持」路線が不思議な共存状態になっているのが今の状況です。もちろん政府のなかは、共存路線一色ではありませんよ。いろいろ動きが錯綜している。もはや国民の支持なくして、経産省だけで電力政策を決めるのは難しい。だから国民的議論が大事なんや。

山岡:その国民の意識に強い影響を及ぼしているのが、原発再稼働の問題です。

 植田さんは、大阪府市エネルギー環境戦略会議の座長として、橋下徹大阪市長と連携して大飯原発再稼働問題と向き合ってこられました。野田佳彦総理の強い意志で大飯3、4号機は再稼働しましたが、関西電力や行政とやりとりをしてきて、どうですか。実際のところは。

まだ続く「事故は起こさない」「だから避難計画は立てない」

植田:安全面では、うーん、驚愕することばかりでした。

 関西電力と話し合ったとき、向こうは何メートルの津波に対して、どうするとか、技術論ばっかり喋るんです。それで、では事故が起こったときの体制はどうですか、と当然、こっちは聞きますよね。そしたら、驚いたことに「事故が起こらないようにします」という答えやねん。びっくりしたわ(笑)。

 「答えになってない。それだけは、やめてくれ」と皆言いました。福島原発事故の最大の教訓は、「原発事故は起こる」ということや。だから起こったときの体制を整える。それは組織文化に根ざしています。でも変わっていないのよ。組織文化は変わらないまま、技術的にはいろいろやっています、みたいな話をされるわけやね。


山岡:うーむ。何だか、自らを客観視できなかった日本陸軍みたいだなぁ。

植田:原発を止めて将来の手を縛ってはダメだという話はわからなくもない。技術面ではいろいろ対処する余地もあるでしょう。しかし、くり返すけど、現在の原発には損害保険は掛かりません。社会的な制御をするには、組織文化の在り方とか、規制体制、独立した安全評価をやってくれる機関だとか、国民の信頼を得られなければ、これは動かせない。

山岡:事故への備えはまだまだですね。

植田:一番けしからんなと思ったのは、文部科学省SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を使った事故のシミュレーションをやらないこと。大飯で。

山岡:えっ? そうなんですか。被害の予想を立てずに対策は講じられないでしょう。

植田:再稼働は政府が認めるとなっているわけだから、避難の方法とか考えてるはずやね。事故が起こったらこうなると予め把握できて、放射能の少ない避難路を検討できる。SPEEDIは、政府がやっているのだから、出せそうなものだけど、出さへん。福井県知事も言わない。

山岡:なぜですか。シミュレーションをして、放射性物質の飛散の流れが見えて自治体が特定されたら、風評被害が起きて、土地の値段が下がる、から?


植田:わかりません。仕方ないから滋賀県だけが知事(嘉田由紀子氏)の英断で、シミュレーションしたわけです。そしたら滋賀県内だけが、被害予想で色づけされた図が出てきた。大阪府市の我々も、知りたいからと滋賀県にお願いしてこっちのシミュレーションも出してもらった。そしたら、やっぱり大阪府市の範囲しかわからない。大飯の原発事故のシミュレーションで、地元の福井はもちろん他の府県は真っ白で、滋賀県大阪府市の放射性物質の流れだけがポッカリ公開された。なんのこっちゃです(笑)。

山岡:滋賀県知事はシミュレーション結果の公表で関西の経済界から凄い圧力をかけられた、と聞いてます。結局、政府が原発再稼働に踏み切った最大の理由は、電力需給の逼迫というよりは電力会社の経営問題ですね。

植田:そう。そこは、もはやはっきりさせたほうがいい。


民間会社に「廃炉」の決断は無理だ

山岡:6月13日に民主党の「脱原発ロードマップを考える会」の会合に資源エネルギー庁が提出した「廃炉決定の際の除去損、解体引当金引当不足額」というペーパーによれば、「原発が再稼働せず、廃炉が決まった場合、北海道から九州までの9電力会社と日本原子力発電の10社に発生する特別損失は総額4兆4000億円」。特別損失を計上すると、東京電力北海道電力東北電力、日本原電の4社は即座に債務超過に陥ります。廃炉となれば、安い電力の打ち出の小づちだった原発が、いきなり不良資産に変わるからです。民間企業が原発をやっている限り、破たんの危機を感じたら死に物狂いで動かそうとしますよ。

植田:電力会社の経営危機は、事故発生の直後に予想できたことでした。政府は、そこを甘く見ていた節があります。

山岡:国策民営でやってきたのだから、民間の負担が限界を超えたら、国が受け皿になるしかないのでは。民間は見込みの立たない不良資産なら「損切り」したい。

植田:ですので、「国家が原発を管理して、廃炉までいく。こっちで面倒をみます」という選択肢はありえます。

山岡:核燃料サイクルのバックエンド、使用済み燃料の処理の部分も重なってくるのではないでしょうか。

植田:そうですね。一種の廃炉ビジネスの国家管理機関がイメージできます。


「原子炉清算事業団」もアリか

山岡:かつて国鉄の分割民営化で「国鉄清算事業団」が設立され、長期債務償還や余剰人員の再就職促進などを行いました。あのような法人に廃炉ビジネスの実業部門がくっついたようなものでしょうか。

植田:組織の形態については議論の余地はたくさんあると思いますが、不良資産化する原発の処理は急がれます。それと長期的には、電力・エネルギーシステム改革と電力会社の再生を連動させること。やはり再生エネルギーが鍵を握ると思います。


山岡:では、話題を再生エネルギーの買い取り制度に移しましょう。




原発依存度の「数字」にアタマを縛られるな
植田和弘京都大学大学院経済研究所教授に聞く【後編】
山岡 淳一郎  2012年7月25日(水)


 7月14〜16日のさいたま、仙台、名古屋での2030年の原発割合などを決めるための意見聴取会で、電力会社幹部の意見表明が相次ぎ、「やらせだ」と批判が起きた(※舞台は図のA)。政府が国民に示した将来の日本の電源ミックス像「三つのシナリオ」をめぐる国民的議論はいきなりつまずきかける。一方、東電の家庭用電気料金は上げ幅を10%台から8%台に下げて認可される見通しだ(同、F)。電力会社の経営に関わる短期的問題と中長期的な電力政策が同時並行で議論されている。

 確かなことは、「三つのシナリオ」が、いずれも再生可能エネルギーを大幅に増やすと宣言している点だ。再生エネルギーを固定価格で全量買い取る制度(FIT)と、その買取り価格がカギになる。太陽光発電は勢いづいている。決定に関わった植田和弘京都大学大学院教授に、その舞台裏と、今後の可能性について訊いた。

山岡:「前篇」の対談で、植田さんは政府の「三つのシナリオ」が示す原発依存度のパーセンテージに国民的議論が集中しているけれど、重要なのは根底の電力・エネルギーシステムをどのように転換するかであり、「本来、数字は結果のはずだ」と指摘されました。

植田:はい。原発依存度だけを考えれば済む話では本来ないはずです。

原発依存度の数字は「結果」でしかない

山岡:そこで「三つのシナリオ」を改めて見ると、どれも再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げることは共通しています。これは電力供給の次元を超えた大転換のようにも映ります。

植田:そうです。現在は電力・エネルギーシステムの歴史的な転換期なのです。

 再生エネルギーは原発や火力とは反対の「分散・小規模型」という性格を持っています。分散・小規模の電源はあちこちで送配電ネットワークとつながる。つなぐ先には、需給の双方向性、電気自動車の蓄電、スマートハウス、スマートコミュニティ、スマートタウンと続く。おっしゃるように次元が変わっていく。

山岡:つまり、3.11までの状態を「正常」と見なして、そこにどう近づけるかではない。発想を全く変えることもアリだと。

植田:たとえば、夏が来るたびにやっている電力需給逼迫の議論なんて、フランス人が聞いたら、アホかと言うでしょう。「何で熱中症にかかりながら働いとるんや、休めばええやん。そしたら電気も使わんで済む」、と(笑)。常識を変え、次元が変われば、電力ピーク問題は消えます。

植田:つまりエネルギーの問題は、働き方とか、地域の自立性、産業構造など、日本の力を発揮するための将来ビジョンと全部リンクしています。三つのシナリオはそこから、「このシナリオが実現したら、どの程度電力・エネルギーシステムが変化するか」を見るべきなんです。

山岡:個人的にはエネルギーとともに食料、地方の一次産業を何とかしないと、日本はえらいことになると思います。補助金漬けの振興策はもう限界ですし。


植田和弘京都大学大学院経済研究所教授(撮影:行友重治 以下同)


植田:そうや。だから再エネや。再生可能エネルギーは地方の農山村、漁村において非農林漁業所得を間違いなく向上させます。狙うは地域の再興です。デンマークが一番の典型やけど、総電力の26%を風力で賄っています。もともと地域出資を基本に置いてるからね。

山岡:デンマークは農家が3軒集まったら風力発電所をつくる、とか言いますね。

植田:あの国は個人や協同組合が発電所を所有する割合が圧倒的に高くて、電力会社の保有は少ない。発電量が地域の消費電力を上回って、売電収入がはいる。それで地域を持続させながら、食料を確保していけるわけや。

「関わり」がないところに信頼も成長も生まれない

山岡:では、改めて素朴な疑問をひとつ。大局的に見て、再生エネルギーの導入と経済成長の両立は可能なのでしょうか。

植田:もちろん可能。大きくは、サスティナブルディベロップメント(持続可能な発展)の観点から、再生エネルギーはウェルビーイング(福祉)を高めます。国民全体がある所得水準を超えてしまうと、所得が一段上っても効果はぐっと落ちる。大事なのは皆が大切なことに「関わっている」と感じられるかどうかや。

 ブルーノ・フライというスイスの厚生経済学者の研究では、自分が参加してコミットできる制度の下で暮らしている人の幸福度は高い。そういう機会が増える社会を、僕らはめざすべきやろうね。

山岡:だから、個々の地域に結びついた分散・小規模の再生エネルギーだと。たとえば農家が発電施設を持てば、ソーシャル・キャピタル社会関係資本)が育つともいえるでしょうか。地域の電力を支えることで、人間関係や信頼関係が再構築される。

植田:うん、それも大事や。まぁ、さしあたり世界の経済学者がグリーンエコノミー、グリーングロースと言って地域の産業、雇用、経済に寄与すると言うてる。ドイツは、過去20年で、再生エネルギーと省エネで二酸化炭素排出量を1990年度比23%削減する一方で、経済は30%拡大しています。

植田:日本で頑張ってもらいたいのは、地域の金融機関。再生エネルギーって、じつはファイナンスの問題なんや。風力発電1基でも5億円とか、けっこうな値段でね。資金が必要です。

山岡:そこで、これ。再生エネルギーの固定買取り価格(調達区分・調達価格・調達期間についての調達価格等算定委員会案)です。

 今月から再生エネルギーを固定価格で全量買い取る制度(FIT)が始まりました。植田さんは、有識者でつくる経産省の「調達価格等算定委員会」の委員長として、価格決定に関わってこられたわけですが、太陽光で1 kwh当たり「42円」。思いきったなぁと感じますが、委員会と他の関係機関の間でスッタモンダはありましたか。

植田:いや、僕らが勝手に決めたのと違うよ(笑)。法律に基づいてちゃんとやった。もとの政府案は1 kwh当たり15〜20円で一律買取り。そんなもの何一つ動かへん。

 FITは再エネ促進の起爆剤になることが期待されてるわけやから、しっかりやらんといかん。再エネごとに総括原価方式で、効率的な発電に掛かるコスト、そこに適正利潤、しかも3年間はプラスアルファも入れると。だからIRR(内部収益率)が上がる。ふつうの儲けの水準を超えている。みんなが投資したくなると思います。

計画経済ではなく、経済合理性で

植田:そこに至るまでは、決めた価格で再エネが増えなかったらどうしよう、逆に儲けが大きすぎてバブルになったらどうしようと、何度も計算しました。いずれ技術が進歩して、量産効果も出てくる。ノウハウが定着して、インフラも変わってくれば、最終的には、FITはいらなくなる。いま、日本は再エネが電力総量の1%です。まだ赤ちゃんやから、育てるには世話をせんといかんでしょう。

山岡:5月22日の日本記者クラブの講演で、植田さんはFITがスタートすれば、今年いっぱいで250万kwh、原発2.5基分ぐらいを再エネが発電すると予想されましたね。

植田:見積もりではね。ただしFITは「発電量」ではなく「価格」を決めた政策だから、経済合理性が頼りや。計画経済的な手法と違うからね。発電の方式別で見るとやはり太陽光の動きが早いな。

山岡:メガソーラーは「農地」の規制が強くて、動きにくくないですか。

植田:僕もそこが気になっていた。ところが、委員会で価格案をつくった後、ある財界人から「買い取り価格さえソロバンに合えば、最初に農地が動きださなくても他が動く」と言われました。それは何かというと、日本国じゅうに塩漬けされている土地です。

植田:バブル崩壊で、誘致した工場が来なかった工業団地、リゾート開発が中断した土地。土壌汚染で、浄化するには数十億単位のお金がかかるので放置されたままの工場跡地。そういう地代をゼロと評価してもいいような、使えない土地がたくさんある。そこが動くと言うのです。実際、そこらじゅうの塩漬けの土地でメガソーラーが始まっています。全国各地で、一斉に動きだしましたよ。

山岡:去年の「3.11」以降、私は福島に取材で通いまして、拙著『放射能を背負って 南相馬市桜井勝延と市民の選択』(朝日新聞出版※)を出しました。そこでも触れましたが、南相馬市津波被害をうけた沿岸地域はメガソーラー、山間部の森林地帯は除染と今後の植え替えを兼ねて木を伐採して、放射性物質を除去しながら焼却処分。その熱で木質バイオマス発電につなげたいという復興構想を持っています。しかしバイオマスは一般的にどうも難しそうな感じがします。いかがですか。

植田:可能性はありますよ。ただ買い取り固定価格を決めるのが、バイオマスは難しかった。


 ありていに言うと、他の再エネ、太陽光や風力には“業界”がありますよね。業界って、ある意味圧力団体だけど、データも出してくる。こちらの持っているデータと突き合わせて、いろいろ検討ができます。しかし、バイオマスは、そもそも業界がないんやね。

山岡:えっ。業界がないんですか。

「熱」を見ないのが大きな弱点

植田:バイオマスって原料がいろいろあるじゃないですか。たとえば下水汚泥や家畜糞尿をメタン発酵させてガスにして発電するのと、木材を燃やした熱で発電するのとは全然違う。木質バイオマスといっても間伐材なのか、木くずなのかで違ってくる。マテリアルによって業者が別々です。もう一つの特徴は、材料収集のコストが意外と大きいんやね。間伐材は、その典型で、収集のシステムがあるか、ないかで、話が変わる。同じ素材の間伐材でもコストは違うんです。厳密に言えば、バイオマスは一件、一件で値付けをしないといかん。しかし、実務的に難しいから、いくつかの種類に分けて値段を決めています。

山岡:今回の「三つのシナリオ」のなかで、首を傾げたのは、コジェネ(熱電併給)が火力のなかに入れられて再エネと切り離されている点です。電力だけでなく、発電時に生じる熱にも、もっと留意すべきではと思うのですが。

植田:熱の視点が欠けているのは、日本のエネルギー政策の大きな弱点です。バイオマスの買い取り価格を決める際にも、だいぶ怒られました。

植田:バイオマスは熱利用も含めて、いろんな使いみちがある。それを発電だけが高く買い取るみたいなイメージで、「バイオマスの流れを壊すのか、おまえは何やねん、壊し屋か」、とね(笑)。気持ちはよくわかりますよ。でも、制度上、法的に熱が入ってないんです。ドイツのようにコジェネ(の熱)を買い取る仕組みになってない。今後は、法律自体を変える必要もあるかもしれないけど、現時点では、まず発電を活性化しないといけないので、こうするしかなかったんです。

山岡:「三つのシナリオ」とも、ベースの基本問題委員会の選択肢ではコジェネは電源の15%をまかなうとして計算しています。省エネも10%程度でやはりどのシナリオでも同じ。なぜ三案ともコジェネ、省エネを固定化するのでしょうか。

植田:穿った見方かもしれんけど、原子力、火力、再エネの三つの比率で、原子力をゼロにすると再エネが大きくなってコストがかかり過ぎや、と。こういうふうにしようかなという感じがちょっとあって、他を変えないわけや。だけどエネルギー全般を考えれば、企業も省エネ投資のほうが有利ならそうするし、自家発電をつくったほうが得ならそっちにいく。本当はそういう選択があるわけや。

山岡:でも、三つのシナリオだけでは、ないように見えてしまう。

FIT制度運用は固定化せず、再生エネルギーの進化に合わせて

植田:再エネと省エネとコジェネを大きくして組み合わせるシナリオは、当然あるよね。実際には。そこを固定化しているのはちょっと、ちょっと……やねん(笑)。議論としては出ているけど、なかなか通らない。

山岡:壁があるんですね。FITは、やっと始まったばかりで、あれこれ批判するのは早いのかもしれません。制度の運用で、今後、何が大切だとお考えでしょうか。

植田:だいじなのは進行管理です。再エネは進化の途上にあります。そこをどう正しい方向へ導くか、です。

 発電方法によっては、日進月歩で技術が進むものもあるでしょう。たとえば洋上風力と陸上風力を、現段階では分けていません。洋上はまだ実績が少なくて、見通しを立てにくい。ヨーロッパ標準で陸上の2割増しくらいにしていますが、実際のデータが出てきたら、別々にしたほうがよくなるかもしれない。バイオマスも、実績が出てくれば、合理的に再構成できる。



植田:もしも仮に極端なバブル現象が起きたら、半年後でも価格か変えられるようになっています。だからコストに応じて価格を下げたり、再エネ買取り分を電気料金に上乗せする分が増えすぎないよう、進行管理をきちんとやっていく必要がある。当初の上乗せ額は一般家庭で月100円ほどなので許容範囲だと思います。この金額を「負担」から「投資」へと社会全体で変えていくには、進行管理を高い透明性のもとに行わねばなりません。失われた信頼の回復が、すべての鍵を握っていると思います。

山岡:国民的議論は始まったばかりです。「三つのシナリオ」のどれを選ぶかの前に、めざす将来ビジョンの議論が求められている。当然、原子力発電で避けて通れない「核燃料サイクル」の議論も入ってきます。

限界を超える選択を

植田:おっしゃるように日本の社会、経済ビジョンと電力・エネルギーのシステム改革の方向性のデザインが大切です。だから核燃料サイクルの話も不可欠。たとえば再処理と高速増殖炉の「もんじゅ」をやめたら何兆円か出てくるから、それを何にどう振り向けるとか、そういうことも含めた議論が必要やね。新しいエネルギー基本計画を決める総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会(※冒頭図中のD)は、本来、そういう議論をするのかと思ってたんだけど、何か、淡々と、電力システムは別途委員会をつくります(※E)、核燃料サイクル原子力委員会(※C)で、と決められました。こうなってくると、それらをコントロールする政治がますます大事なのですが……。

山岡:大げさかもしれませんが、私たちは文化云々ではなく、文明の選択の問題に直面しているようです。

植田:物質文明の限界やねん。その先を生きていくために、今、選択を迫られている。


====================