「keniti354の日記」since72:5月25日(金)12℃曇り「東日本大震災」442日

*朝トレ:女房殿朝早いお出かけ、運転手役のため中止。(昼時散歩に格下げ実施)いつもの孫の世話焼き、「立九」の運動会だそうです。あ、「立川第九小学校」孫達が通う小学校です。我れは野暮用の為、今回も行けませんでした。



*「東日本大震災」442日


(5月18日に紹介の続編です)
今日の一題  地熱発電:歩みは遅々として・・・しかし、ポテンシャルは大きい」!


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地熱開発に3つのハードル世界第3位を誇る地下資源を生かす【2】山家 公雄  


前回は、大きな資源ポテンシャルをもち、原子力代替電源として適している地熱発電に対する期待が急速に高まっていること、開発のドライバーとなる再生可能エネルギー電力固定価格買い取り制度(FIT)の条件は事業者の要望に沿って決められたことを紹介した。 今回は、地下資源開発に伴うリスクにどう立ち向かおうとしているのか、国立公園内の立地は実現できるのか、温泉旅館事業者との調整はつくのか、に焦点を当てて解説する。

蒸気供給事業と発電事業に分かれていた

 まず地熱発電のシステムを概観してみる(資料1)。地下のマグマの熱が地中の水に触れて、熱水・蒸気が生成され、貯留層に溜まる。ここに抗井(生産井)を通して熱水や蒸気を地表に噴出させる。熱水と蒸気を気水分離機(セパレーター)を通して分離し、熱水は減圧機(フラッシャー)を通して蒸気を発生させる。この蒸気をタービンに当てて発電する。発電システムとしてみた場合、熱水や蒸気が通る導・配管、セパレーター、フラッシャー、タービン、発電機などからなる。汽力発電所としてみる場合の最大の特徴は、所内に燃料を焚くボイラーがないことである。ボイラーに相当するのは天然のマグマということになる。使った熱水は、還元井を通して地下に戻し循環させる。

 マグマが有するエネルギーの規模に比して、利用するエネルギーは微々たるものであり、利用後の熱水を地中に戻すこともあり、再生可能エネルギーに分類される。日本のように降雨量の多い地域ではなおさらである。火力発電では水で蒸気を作るが、地熱は様々な成分を含む地下の熱水を使う。地上での環境によくないものも含まれる。公害防止設備を設置してこれを除去し、還元井を通して地中に戻す。

 火山地帯は自然公園を形成し、従って地熱発電の適地は公園内に多く、掘削や配管・発電所建設工事は自然環境に影響を及ぼす。地熱発電に適した土地は、たいてい周囲には温泉旅館があり、熱水の大量使用により温泉が枯渇するのではとの懸念が持たれる。

 地熱発電は、蒸気供給(地下資源開発)事業と、天然の蒸気を当ててタービンを回す発電事業の2つに分かれており、日本では一般に異なる事業者が担当していた。パイオニアである日本重化学工業、鉱物資源開発会社である同和鉱業(現DOWAホールディングス)、三菱マテリアル三井金属鉱業(奥会津地熱)、新日本製鉄日鉄鉱業、石油資源会社である出光興産、石油資源開発が蒸気開発・供給を行い、電力会社が蒸気を買っていた(資料2)。

 地下資源開発はそもそもリスクの大きい事業である。電力会社は総括原価で守られているが、開発会社の採算は蒸気をいくらで買ってもらえるかで左右される。これまでは、ほとんどが赤字を余儀なくされたといわれている。川下の発電まで手がけたくとも、当時は、電気事業法により開発会社は発電事業ができなかった。

 一方、電力会社は、必ずしも開発会社の経営までは配慮してくれなかった(と開発側は思っている)。地熱開発は、電力自由化とRPS制度(電気事業者に一定量以上の新エネルギーを利用した電気の利用を義務付ける制度)の対象から外れたことなどにより、八丈島が運開した後14年間も開発の動きがない。有能な職員を抱えながら撤退を決断した事業者も少なくない。実際に事業を行っている者は8社から4社に減少した。石油資源開発日本重化学工業DOWAホールディングスの3社が撤退し、新日鉄は蒸気生産事業の経営の主導権を共同事業者に委ねた。

FITで開発・発電が一体化する事業に

 今回のFIT適用により、この議論は根本的に変わる。電力の販売条件に事業性が集中することから、開発から発電まで一貫した事業が前提となる。政府検討の場でも、資料を提出しプレゼンを行ったのは開発事業者である。開発事業者が発電まで通して行うという前提である。一気通貫モデルにより、開発事業者は採算見通しを立てやすくなったといえる。 それでも事業リスクは大きい (注(FIT):固定価格買取制度)

 事業リスクのほとんどは、開発事業にある。貯留層に当たるか当たらないか、一定以上の期間に安定して噴出し続けられるか。調査・試掘した場所で、そうした確証が得られない場合は、発電まで進めなくなる。一応のメドが立っても、環境影響調査や地元の説得というハードルが横たわる。そのステージを経てはじめて発電事業の投資を行うことになる。それまでは銀行融資は難しく、所要資金は自己資金(エクイティ)で賄うことになる。調査・開発段階で4分の1の費用がかかる。3万キロワット級で60億円かかる。そこでギブアップとなると、それまでの負担はFITではカバーしてくれない。「発電してなんぼ」の支援制度である。

 このリスクがあるから投資回収率(IRR)は税後で8%という高い水準が認められそうだ。しかし、これは、事業者が複数の開発案件を持っており全体でカバーする、という前提で意味をもつ。少ない案件しかないと、当然ながら大きなリスクとなる開発事業者の数は減り、経営資源は細ってきている。事業件数をこなすだけでなくコンソーシアムを組むうえでも限界がある。


大同団結でリスク回避を

 そこで、今後の発展を見込んで 「地開協拡大ビジネスモデルワーキンググループBMWG」 を2011年8月に発足した(資料3)。日本地熱開発企業協議会(地開協)の会員4社(出光興産、三井金属日鉄鉱業三菱マテリアル)および実績のある2社(日本重化学工業石油資源開発)に加えて、新たに8社(地熱エンジニアリング、地熱技術開発、JFE エンジニアリング、国際石油開発帝石、JX 日鉱日石金属、富士電機、環境エネルギー政策研究所、ソフトバンク)が参加して、14社で始まった。その後商社4社などが加わり、2012年5月10日時点で23社となっている。まだ増える見込みである。情報の共有、共同調査、出資金の分担などを行い、リスク分担を図っていく。政府や自治体との間の交渉窓口一本化による効率向上も見込んでいる。

 経済産業省も、調査・開発段階での支援を決めている。抗井による掘削費用に対して補助金制度を創設した。補助率は地表調査で4分の3、噴気試験を伴わない掘削調査で2分の1である。従来の補助は水力と一緒の枠であったが、今回は初めて地熱専用の制度となる。補助金からの脱却をうたってFIT導入を進めたなかでは、かなりの支援ともいえる。しかし、あくまで調査を主とする試掘が対象で、調査・開発費全体の投資額に占める割合は小さい。法改正を予定しているJOGMEC独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の支援が具体的にどうなるかが注目されるが、基本的には民間がリスクをとる構図である。民間大同団結の意味がそこにある。換言すると、その意気込みを示したことが政策当局を動かしたとも言える。


画期的な方向転換に踏み切った環境省

 世界3位の潜在量をもちながら発電能力で8位に甘んじ、14年間も新規稼動実績がないのは、エネルギー行政の位置づけに負うところが大きいが、環境行政上からくる立地制約も大きかった。 地熱資源の約8割は国立・国定公園(以下自然公園)内に存する(資料4)。自然公園は、保護すべき順番に特別保護地区、第1種、第2種、第3種の特別地域および普通地域に区分されるが、公園内の開発は原則、自然公園法が制定される前から計画があった6地域(大沼、松川、鬼首、八丁原、大岳、滝の上)を除いて、開発できなかった。1972年に結ばれた旧環境庁と旧通商産業省の覚書が制約となっていた。また、特別保護、第1〜3種、普通地域などの区分は、地元の利用状況と国有林の都合によるもので保全上の格差は特にない、との指摘もある。



環境省は、3月27日付で「国立・国定公園内で地熱開発に関する新たな通知」を都道府県に伝達した。第2種・第3種内では、傾斜掘削に加えて、垂直掘削や発電所建設を条件付きで認める。その条件は、関係者や地域との合意形成、景観に配慮した構造物の設置、地域貢献等を満たす「優良事例」であること、また開発の段階ごとに取り組み状況を確認しその都度可否を判断することである。字面をみるかぎりでは原則禁止の枠内であり、厳しい条件を羅列しているので実効性を危ぶむ声もあるが、概して高く評価されている。地開協の安達正畝会長は「画期的な第一歩、優良事例を創っていきたい」と評価している。

 同省は、優良事例の形成に向けて具体的な検討を開始する。細野環境大臣は、3月27日に「自然と調和した地熱開発に関する検討会議を発足させる。景観や自然環境の保全をした上で本腰を入れて地熱を開発する」と発言した。大臣は、3月19日に本邦最大の九州電力・八丁原発電所を視察している。会議では、当面2012年度から始まる第2種・第3種特別地域での「優良事例の形成」について議論する。同省は、やはり従来路線を大きく転換したのである。ポテンシャルをいかせる基盤が整った。

鍵を握る地元温泉事業者の理解

 地熱発電開発にかかる3大制約要因は、エネルギー政策の低い位置づけ自然公園法などによる立地規制に加えて、温泉旅館事業者などの地元の反対がある。 地元に理解してもらわなければ、地下資源の調査にも入れないが、このハードルは低くない。

 前回、規制緩和を見越して、開発候補地議論が盛り上がっていることを紹介したその代表が磐梯山を主とする福島県であるが、既に反対する組織が形成されており、説明会でも多くが集まり気勢を上げたと報道されている。 ある事業者は「開発者の組織化を進めている中で反対者の体制が整った」と危機感をもつ。

 地元の理解形成は、「本来、地道におこなわれるべきものである」「ある程度の合意形成前に地点名が出ると難しくなる」との意見がある。しかし、今回は、地熱の可能性と期待を理解してもらうために、官民で敢えて開発可能地域を明示したと考えられる。開発再開の絶好の機会であり、長年の空白により悠長に構える余裕がないなどが背景にあるのだろう。いずれにせよ、開発推進側は、不退転の決意で臨んでいる。

 環境省は、3月27日に「温泉資源の保護に関するガイドライン地熱発電所関係)」を、技術的な助言として都道府県に通知し、地元調整のあり方を具体的に解説した。各段階での許可や不許可の判断基準や考え方を示しているが、あわせて現在稼働している地熱発電所一帯を対象に行った地熱・温泉シュミレーション結果も盛り込んでいる。

温泉への影響を巡る議論

 温泉(旅館)事業者は、近くで地熱発電開発が行われると、温泉源が枯渇することを恐れる一方で、温泉熱源は浅いところにあるが地熱発電用熱源は深い所にあり、また発電利用後の温水は還元性を通して地中に戻されることから心配は不要と説明される。これに対しては、熱水が溜まっているところは貯留層というよりは大きな割れ目であり、温泉用の熱溜まりと地熱用の熱溜りが完全に独立している保障はない。影響を受けないと言い切れないし、実際に影響を受けた事例がある、そもそも地下の状況についてはまだ解明されていないことが残っている、との反論がある。

ここで、もう一度地熱発電の全体システムを見てみる(資料5)。



 マグマ溜りの熱は、深いところに溜まっている地下水に伝わり熱水貯留層を形成する。一方、温泉に使われる熱水はより地表部にある。この深部にある熱水貯留層と浅部にある温泉帯水層との間には、一般に水を通さない(し難い)層がある。この不透水槽を通して深部の熱が浅部に伝わる。不透水の程度により、地熱発電の温泉に対する影響が異なることになる。

 両者の独立性の弱い方から、同一熱水型、熱水滲出型、蒸気加熱型、伝導加熱型、独立型に分類される。 「蒸気加熱型」 が物質および熱の移動を伴うのに対し「伝導加熱型」 は物質移動を伴わず影響する可能性は非常に低い。環境省の「温泉資源の保護の関するガイドライン」によれば、日本の地熱開発地域では伝導加熱型に属するものが多い、としている。また、同省が2010年度に公表した「地熱発電に係る環境影響審査手法調査業務」には、わが国の地熱発電は「40年以上の実績があるが、この間周辺温泉等への影響が発現した事例はない」としている。
地熱学会は、批判に科学的根拠ないと分析

 地開協および日本地熱学会は、具体的に以下のように説明する。

 秋田県の澄川発電所は、1949年に大沼発電所から2キロメートルところに建設されたが、今まで全く影響が出ていない。日本の火山帯の地質構造は、断層が多くブロックとして区切られている。従って、地下水は横への流動より下方への流動に支配されがちになる。

 また、2011年8月に「日本秘湯を守る会」から不都合と指摘された事例に対しては、いずれも問題はなく1998年までに回答している、としている。松川発電所の場合は、温泉井戸がスケール(坑井内に形成される炭酸カルシウムなどの沈殿物)により閉塞されたもの、大岳・八丁原発電所では周囲の環境に変化はない。また、澄川発電所では、澄川温泉は変化は見られない、赤川温泉は温度はやや低下傾向なるも湯量は増加傾向であり国道改修工事の影響の可能性もある、としている。


 地熱貯留層と温泉帯水層との関係は、両者の温度、水位、泉質、位置(深度、水平距離)により判断することができる。いずれにしても、その関係を科学的に判断するためには、十分にモニタリングすることが重要になる。地開協は、科学的な調査に基づく情報開示や地元の納得は当然必要として、地道に取り組んでいくとしている。また、地元理解に関して政府は積極的に支援する用意がある、と感じている。

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◎.いずれにせよ政府は地元住民に先ず十分な説明と、モニタリングの精度を期すべきである。 (keniti3545)

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