「71才の365日」11月25日(金)曇り4℃「東日本大震災」260日

*朝トレ:中止、女房殿孫共との「デート」、東京へ我れは東部日光駅までの(いつもの)運転手役です。



*「東日本大震災」260日

今日の一題 福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」
 

福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」 大前研一プロジェクトチーム→復興日本の記事から)

(*紐付きと思われる方は、眉につばを付けてお読み下さい)我れは時系列の整理が付きました。

「プロジェクトについて」 (チームからの説明)

『背景』

会員向けのテレビ番組「ビジネス・ブレークスルー(BBT)」の福島第一原発事故に関する放送を、3月12日、同19日に連続してYouTubeにアップしたところ、250万回を超えるアクセスがあった。引き続き、著書『日本復興計画』(文藝春秋)等を通じて情報発信していたが、必ずしも政府が真実を伝えているとは言い難いと判断した。そこで、事故再発防止ご担当の細野豪志首相補佐官(当時)に対して、次の提案を行った。

ストレステストや保安院の作業に対する「民間の中立的な立場からのセカンド・オピニオン」として検討プロジェクトを発足し、3カ月以内に事故分析と再発防止策に関する提言をまとめたい
本プロジェクトは、納税者・一市民の立場からボランティア・ベースで実施する為、調査に必要な情報へのアクセスの仲介だけをお願いしたい
客観的な視点から取りまとめるので、その内容に関しては、国や電力事業者の期待するものになるかどうかは分からない。

プロジェクトの存在については、報告がまとまるまで、秘密裏に取り扱って頂きたい

「プロジェクト・チーム」

MITで原子力工学博士号を取得し、株式会社日立製作所高速増殖炉の炉心設計を行っていた大前研一が総括責任者。プロジェクト・マネジメントの経験をもつ柴田巌ら2名が事務局。インタビュー、ヒアリング等の情報聴取に対し、原子炉オペレーションの専門家として東京電力株式会社及び電力グループから2名、原子炉の設計専門家として日立GEニュークリア・エナジー株式会社2名、株式会社東芝4名の協力を得た。

「作業工程」

BWR型を中心に、主に福島第一、福島第二、女川、東海第二原子力発電所を調査した。
何が起きたのか?全プラントに対し、地震発生から時系列で何がどういう経緯で起きたのかを追跡(クロノロジー
原因・誘因は何か?大事故に至った4基(福島第一1、2、3、4号機)と、冷温停止にこぎ着けた他の原子炉(福島第一5、6号機、福島第二、女川、東海第二)との比較、差異分析
教訓は何か?設計思想、設計指針と事故に至った経緯(クロノロジー)との因果関係分析
組織・リスク管理体制苛酷事故における組織運営体系上の問題点の抽出(事故、放射能、避難指示、地元自治体との関係など)
情報開示国民への情報開示、その課題

 『結論』

「教訓」
最大の教訓は、津波等に対する「想定が甘かった」事ではなく、「どんな事が起きても苛酷事故は起こさない」という「設計思想・指針」が無かった事である――その意味で、福島第一原発の4基の重大事故は、天災ではなく人災である
設計思想に誤りがあった(格納容器神話、確率論)
設計指針が間違っていた(全交流電源の長期喪失、常用と非常用の識別)
炉心溶融から引き起こされる大量の水素及び核分裂生成物の発生・飛散は想定外(水素検知と水素爆発の防止装置)
当初の設計にはなかった“偶然”が大事故を防いだケースが複数ある(第一6号機の空冷非常用発電機など)

「提言」
再発防止のために。そして、原発再稼動の是非を論理的に議論するために
監督・監視の責任の明確化(人災であるにも拘わらず未だに誰も責任をとっていない)
いくら想定を高くしても、それ以上の事は起こり得る。「いかなる状況に陥っても電源と冷却源(最終ヒートシンク)を確保する」設計思想への転換。それをクリアできない原子炉は再稼働しない
「同じ仕組みの多重化」ではなく、「原理の異なる多重化」が必須
「常用、非常用、超過酷事故用」の3系統の独立した設計・運用システムを構築する
事故モード(Accident Management)になった時には、リアルタイムで地元と情報共有し、共同で意思決定できる仕組みの構築
事業者・行政も含め、超過酷事故を想定した共用オフサイト装置・施設や自衛隊の出動などを検討する
全世界の原子炉の多くも同じ設計思想になっているので、本報告書の内容を共有する

『重要な知見』

電源喪失
外部交流電源は、地震によって大きく破損している(オンサイトの電源確保が鍵となる)。そして、その後の長期にわたる全電源喪失(直流、交流)が致命傷となった
非常用発電装置が水没
海側に設置した非常用冷却ポンプとモーターが損傷
直流電源(バッテリー)が水没
外部電源取り込み用の電源盤が水没
これらはいずれも想定を超える巨大津波がもたらした損壊である。しかし、大事故に至った理由は津波に対する想定が甘かったからではない

  • より小さな津波でも、海岸に並んだ非常用冷却水取り入れ装置は破壊される
  • 水没しない空冷非常用電源が健全であった事などが生死を分けている

「設計思想」
どの様な事象が発生しても、電源と冷却源(及び手段)を確保する設計思想であれば、緊急停止した炉心を「冷やす」手段は講じられ、過酷事故を防げたはずである
「長期間にわたる全交流電源喪失は考慮する必要はない」という原子力安全委員会の指針に代表される設計思想は、この重要な点を軽視していたと言わざるを得ない。今回の巨大事故につながった直接原因である
事故当時の国民へのメッセージは適切であったのか?
福島第一1号機のメルトダウンは、3月11日当時すでに分かっていたはずであるが、その後一ヶ月が経過しても「メルトダウンは起こっていない」とする発表との乖離は大きい
国民や国際社会に対する情報開示は適切であったのか、疑問が残る

「当時の憶測や風評について」

プロジェクトが調査した範囲では、以下を裏付ける事実は見当たらなかった

1.海水注入やベント実施が遅れた為に、福島第一1号機の事象進展を著しく早めた

2.地震による大規模な配管破断が起きた為に、同1号機の事象進展を著しく早めた


3.格納容器がマーク1型であった為に、同1号機の事象進展を著しく早めた

4.福島第一原発において過度な運転ミスがあった為に、事象進展が早まった

5.福島第一4号機の水素爆発は、同プラント内の使用済み燃料の溶融が主因で発生した

今回の主因は、「いかなる状況下においても、プラントに対する電源と冷却源を提供する」という安全思想、設計思想が不十分だった点にあり、今後の再発防止においても、この点を中心に議論すべきである

「正当・公平に評価されるべき点」
・大地震においても、全ての原子炉は正常に緊急停止(スクラム)している。大規模な配管破断も起きていない
・また3月11日当時、最悪の極限的な危険の下で現場対応に当った福島第一の運転チームがマニュアル以上の奮闘をした点も同様


大前研一さんと柴田巌さんによる解説)


福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」  解説映像 YouTube 約2時間 この報告書の全てが解ります↓

事故の時系列が写真入りで細かく解説されている。 一応大前さんが政府に縛られず、自前のプロジェクトを駆使して編集したものです、結論的なものは自己判断という姿勢でなら、必見と言えます。   
 ↓ 大きめの画面で資料も見やすいです。「2時間」

http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=pr.bbt757.com%2F2011%2F1028%2F.html&source=web&cd=1&sqi=2&ved=0CB0QFjAA&url=http%3A%2F%2Fpr.bbt757.com%2F2011%2F1028.html&ei=nADOTrySGfGamQWqoKjNDQ&usg=AFQjCNFMzFwirO-JBxoQtcg9ZSmEzzsmIQ

 全文ですが ↓  ↑時間が取れればやはり音声画像入りがおすすめですね

大前研一: 福島原発事故に何を学び、何を生かすべきか」2011/11/15

大前 研一(おおまえ・けんいち) [BPnet]
 私は細野豪志環境相原発事故担当相と共同記者会見を10月28日に行い、私たちのプロジェクト・チームがまとめた報告書「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」を提出した。

1、事実をありのままに分析し提言した
 話は3カ月ほど前にさかのぼる。細野氏と面談する機会があり、そこで「福島第一原発事故以降の停止中の原子炉に関しては、保安院のストレステストが地元住民に受け入れられない場合を想定して、民間の中立的な立場から福島第一原発事故を分析し改善策をセカンド・オピニオンとして作っておいた方がいいのではないか」と申し出た。細野氏はこれに同意し、秘密裏にプロジェクトが動き出したのである。

 「秘密裏」というのには理由がある。もし報告書がまとまる前に「大前が調査に乗り出した」などと報道されてしまうと、外野からのノイズが混じってしまいかねない。それではリポートの正確性が担保できなくなる。私はそれを怖れたのだ。

 このほど調査がまとまり、その報告書を細野氏に直接手渡したから、もはや秘密にしておく必要はなくなった。ここで改めて報告したいと思う。

 私はこの調査をボランティアで行っている。日本政府からの依頼、つまり政府から報酬を得て事故分析を行うと、どうしても政府の意向をくんだリポートになってしまう。それは私の本意とするところではないし、何よりそれで事実や提言が歪んでしまえば、日本経済はもとより国民生活に多大な支障が出るからだ。

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2、福島原発事故はまぎれもなく「人災」である
 本稿では要点を述べるに留めるが、私の解説の詳細についてはYouTubeの動画をご覧いただきたい。動画では、プロジェクトのマネジメントを担当した柴田巌氏による事故内容の解説もある。

 また本稿で説明に使う資料は報告書から引用したものであり、報告書自体も公開しているので併せてご覧いただきたい(資料・映像へのリンクはこちら)。

 報告書とそのサマリーがあるが、報告書は186ページにも上るもので、これは福島第一原発事故に関して世界で最も詳細なリポートとなっている。原発事故関連の情報には食傷気味だという皆さんも、「そんな事実があったのか!」と一驚されるはずである。

 今回の調査で改めて明らかになったのは、直流・交流問わず全電源が長時間喪失したことによって、福島第一原発1〜4号機で「過酷事故」が発生したという事実である。

 東京電力や政府関係筋はこれまで「想定外の大地震」「千年に一度の大津波」と繰り返し述べており、これがあたかも不可抗力の天災であるかのように印象操作してきたようだが、それは違う。今回の事故は明らかに「人災」だ。



3、原子力安全委員会の指針には、どう書かれていたか
 私が「人災だ」と断ずる根拠を以下に示しておこう。

画像のクリックで拡大表示
 原子力安全委員会の指針集からの抜粋(図中、黄色の部分)を見てもらいたい。ここに「長期間にわたる全交流電源喪失は、送電の復旧又は非常用電源設備の修復が期待できるので考慮する必要は無い」と書いてある。これは原子炉の設計・運用指針であるから、原子炉メーカーと東電はこれに基づいて原子炉を建設・運用してきたわけである。

 その結果どうなったか。言うまでもなく、「送電の復旧又は非常用電源設備の修復」は「期待」すらできず、結果として炉心溶融、水素ガスと核分裂生成物質の拡散という最悪の事態を招いてしまった。

 つまり、この指針のせいで今回の事故は発生したわけで、これが人災でなければ一体何だろうか。

 指針はこうも定めている。「非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分に高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい」

 この一文はきわめてわかりにくく書かれているが、その意味をわかりやすく言えば次のようになるだろう。「原子炉建屋には複数の非常用発電機(ディーゼル発電機)やバッテリーがある。外部電源も複数系統あるし、電源車を持ち込むことも可能だ。系統の異なる電源が用意できるので、全交流電源喪失という事態は起こり得ない」



4、現在の指針がある限り、過酷事故は再び起こり得る
 しかし実際は、外部電源は最初の地震ですべて途絶え、地下に設置されたディーゼル発電機やバッテリーは津波で水没して使えなくなり、外部電源を取り込む配電盤も津波で水没してしまった。おまけに非常用電源車が到着しても、電圧が合わなかったり、水没したりしたため接続できないという想像すらしなかった修羅場に陥っている。

 ここで重要なのは、「全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい」という指針が存在する限り、原発の過酷事故は今後も起こり得るということだ。

 日本政府は国際原子力機関IAEA)に対して、「今回の事故の原因となった津波による被害は、津波の発生頻度や高さの想定が不十分であり、大規模な津波の襲来に対する対応が十分なされていなかったためにもたらされたものである」と報告している(前ページ図中、緑の部分)。しかし、これも認識が誤っている。

 問題は、津波の頻度や高さの想定が甘かったことにあるのではない。最悪の事態が発生しても、それこそジェット機が墜落してきたり、テロリストによって爆破されたりしたとしても、たとえ津波によって完全に水没したにしても、「電源を必ず確保し、原子炉を冷温停止まで持っていけるように冷媒(ヒートシンク)を用意する」という安全思想が指針になかったことこそが問題なのだ。


5、いかなる事態でも冷温停止させる設計思想が必要だ
 これまで想定していた津波の高さは10メートルでした。だからあんな事故が起きました。今後は20メートルにします――こんな考え方は無意味だ。仮に30メートルの津波が襲ってきたらどうするのか。

 住民には10メートル以上の津波は想定できないと説明しておきながら、20メートルの津波が現実に襲ってきた。「想定が甘かった」で済まされる話ではないし、「今度は20メートルを想定しているから安全だ」といっても信じる国民はいないだろう。

 もちろん、そんな津波が押し寄せてくるのは1万年に一度あるかないかだろう。しかし、「1万年に一度」が明日発生しないとは誰にも断言できない。その「一度」限りのことが起きてしまったら、100%の確率で今回のような過酷事故に至ってしまう。

 つまり、確率の問題で原子炉の安全は確保できないのである。「一度」限りのことが起きても100%安全に冷温停止できるという方法を確保していなければ、その原子炉は再稼働してはいけない。

 福島第一原発事故の最大の教訓は、「いかなる事態が発生しようとも、冷却装置とそれを動かすための電源を多重に確保し、冷温停止にもっていく。絶対に今回のようなメルトダウンメルトスルーを引き起こさないようにする。その設計思想が必要だ」ということだ。


6、「想定外の大津波」は責任逃れの詭弁
 これは、実はそんなに難しいことではない。現に福島第一原発の5〜6号機は、「たまたま」水没しないところに設置されていた1台の空冷式ディーゼル発電機によって冷温停止させることができた。日本政府はこの事実こそ世界に向けて発信しなければならない。

 しかし、日本政府が「津波の発生頻度や高さの想定が不十分」などとIAEAに報告してしまったために、世界の原発保有国の中には「福島第一原発事故は、地震大国である日本ならではの特殊事例だ」と考えているところもある。

 なるほど、海外には地震が少ない国があるかもしれない。大津波もないところもあるかもしれない。だが、そんな国であっても、大洪水に見舞われるとか、航空機が墜落するとか、あるいは好戦的な国家からミサイルを打ち込まれるといった可能性がゼロとは言えない。テロリストが電源を破壊するかもしれない。

 もしそういう事態が生じた時、その国の原発福島第一原発と同じ運命をたどることになるだろう。およそ原発とは、どこの国でも同じような設計思想と技術で建設されているのである。

 今回の福島第一原発事故の原因を「想定外の大津波」に求めるのは、将来に大きな禍根を残す役人の責任逃れの詭弁だと私は感じている。


7、保安院、政府、東電が謙虚に受け止め、反省すべき2点
 経済産業省原子力安全・保安院や政府、東電など関係筋は、下図にまとめた2点を謙虚に受け止めて反省し、その対策に取り組むことが必要であると考える。


画像をクリックで拡大表示

ひとつは、「設計思想そのものが間違っていた」ということである。

 先に、原子力安全委員会の指針には、何がなんでも電源と冷却装置を確保するという思想が存在しなかった、ということを書いた。こういう思想がないのだから、当然メルトダウンメルトスルーする事態も想定していない。

 メルトダウンに伴って燃料棒の被覆管のジルコニウムと水蒸気が反応して大量に発生する水素のことも想定していない。水素が発生しても「想定していない」のだから、それを検知する方法も、ましてや逃す方法も考えていない。その結果が地震発生の翌日に起きた「あの衝撃的」な水素爆発につながったのである。

 実際、1号機のメルトダウンは震災当日の夜には始まっており、3月12日には完全に熔け落ちた状態になっていた。これを炉心溶融は起きていない、と言い続けた政府、保安院、東電の罪は大きいし、その嘘を暴けなかったマスコミの責任は重い。


8、災害規模を前提にした対策の議論はあまり意味がない
本連載(福島第一原発で何が起きているのか、「炉心溶融してしまった福島原発の現状と今後」)はもとよりYouTube(こちらを参照)でも、炉心溶融に関して3月13日および19日にはその可能性に関して述べると同時に、今後の対策に関しても提言している。

 今回の調査で衝撃的だったのは担当者が驚くほど正確に分刻みの記録を取っており、その重要な点は炉心溶融が3月11日当日の夜から始まっていた、ということである。

そうした事態にもかかわらず、「震度がいくつの時は」「津波の規模がこういう場合は」15メートルの津波防御壁を、といった災害規模を前提にした対策を議論している。そうした議論は即刻中止し、「いかなる事態が発生しようとも電源と冷却源を必ず確保し、絶対にメルトダウンを起こさないようにするにはどうしたらいいのか」を真剣に考えるべきだ。

 もうひとつは、「最後の砦としての『格納容器神話』が崩れた」ことである。

 これまでは「原子炉は格納容器によって守られています」「万一のことがあっても格納容器が放射性物質の拡散を食い止めます」「だから安全です」といった「格納容器神話」によって原発周辺住民および国民を安心させていた。


9、「格納容器神話」はわずか1日で崩壊した
 だが現実には、ひとたびメルトダウンが起きてしてしまえば、溶融核燃料はいとも簡単に16センチもの厚い鋼鉄でできた圧力容器を突き破り、格納容器に熔け出してくる。その結果、高温となった格納容器のフランジなどが破壊されて核分裂生成物や汚染水をまき散らしてしまうことが明らかになった。

 2メートルのコンクリートで守られた格納容器は核暴走などを想定して作られているが、冷却不能となって燃料が高温になって熔け出す「炉心溶融」に関しては無力であることが証明された。

 1号機に関しては地震発生の翌日にはメルトダウンが起きていたわけだから、「格納容器神話」はわずか1日で崩壊したことになる。

 原子炉の設計においては常用と非常用が識別されていなかったことも大きな問題であった。常用の主冷却には海水を使うが、今回はこのポンプとモーターが海岸に並んでいたために、すべて津波で破壊されている。

 しかし非常用のディーゼル発電機を冷やすためのポンプも主冷却系の隣に設置していたために同じく津波で破壊されている。津波でやられたという非常事態に、同じ原因で非常用のポンプもやられてしまう、という設計はどう見てもおかしい。今回は非常用のディーゼル発電機はどのみち津波で水没してしまっていたのであまり問題視されていないが、そもそもこうした設計思想自体に大きな問題があることも露呈した。



10.「多様化」こそが原発事故のリスクを削減できる
 辛くも生き残った6号機のディーゼル発電機は「たまたま」水を被らない高所にあり、「たまたま」空冷式であったために津波の被害を免れた。そして、電源を分けることができた5号機と共に安全に冷温停止した。

 福島第一原発では外部電源がすべて喪失し、電源盤がすべて水没したが、空冷のディーゼル発電機1台が生き残ったためにかろうじて5〜6号機の冷温停止に成功している。この空冷式の発電機は設計当初にはなかったもので、保安院から追加の非常用発電機設置を要求されて、経費の安い空冷式を追加した、という偶然の幸運である。

 このことからどういう教訓が導き出せるか。それは、安全設備の「多重化」では安全は確保できず、「多様化」こそが原発事故のリスクを削減できる、ということだ。原理の異なる発電装置と冷媒(ヒートシンク)を多重に用意する。これが福島第一の教訓である。

 英語の諺に「卵を同じ籠にすべて入れてはいけない(落としたらすべてグシャっと割れてしまう)」というのがあるが、私たちはこの教訓を得るために、重くて大きな代償を払ったことを忘れてはならない。


事故の教訓を踏まえないストレステストなど無意味
 東電・柏崎刈羽原発を抱える新潟県泉田裕彦知事は、「原発再稼動において、意思決定メカニズムも含めた福島第一原発の検証が必須であり、それを加味しないコンピューター・シミュレーションを行っても本質的ではない」と述べている。至言である。

 現在、日本で、そして世界で行われているストレステストには、「いかなる事態が発生しようとも、冷却のための電源と冷媒(ヒートシンク)は絶対に確保」という思想は盛り込まれていない。だから「無意味だ」とまでは言わないが、それでは福島第一原発事故の教訓はまったく生かされない。

 日本政府は事故発生から1カ月にも渡って、「メルトダウンはしていない」と言い続けた。それが作為的な嘘であったのか、それとも本当に知らなかったのかは今回の調査ではわからなかったが、事実がここまで明るみに出た以上、福島第一原発の教訓が生かされないままでは停止中の原発を再起動させることは難しいだろう。地元民の納得が得られないからである。

 また、日本における原発の新規建設は事実上不可能になったと考えるべきだ。



11.事故の教訓を踏まえないストレステストなど無意味
 東電・柏崎刈羽原発を抱える新潟県泉田裕彦知事は、「原発再稼動において、意思決定メカニズムも含めた福島第一原発の検証が必須であり、それを加味しないコンピューター・シミュレーションを行っても本質的ではない」と述べている。至言である。

 現在、日本で、そして世界で行われているストレステストには、「いかなる事態が発生しようとも、冷却のための電源と冷媒(ヒートシンク)は絶対に確保」という思想は盛り込まれていない。だから「無意味だ」とまでは言わないが、それでは福島第一原発事故の教訓はまったく生かされない。

 日本政府は事故発生から1カ月にも渡って、「メルトダウンはしていない」と言い続けた。それが作為的な嘘であったのか、それとも本当に知らなかったのかは今回の調査ではわからなかったが、事実がここまで明るみに出た以上、福島第一原発の教訓が生かされないままでは停止中の原発を再起動させることは難しいだろう。地元民の納得が得られないからである。

 また、日本における原発の新規建設は事実上不可能になったと考えるべきだ。


12.事故の早い収束と停止中の原発の安全性確保を急げ
 つまり、ここで根底から原発の安全性確保の見直しを早急に行わないことには、電力需要の逼迫は今後ずっと続くことになる。

 将来的には再生可能エネルギーの開発や省電力技術の普及によって電力事情は少しずつ改善されていくだろうが、事故前に原発が日本の電力需要の3割以上を賄っていた状況を考えれば、国内すべての原子炉を停止させる(あるいは停止させたままにしておく)のは現実的な解ではない。

 政府と電力関係筋は、私の「福島第一原発の教訓」報告書を踏まえ、事故の一刻も早い収束と停止中の原発の安全性確保を急ぐべき、と考える。

 私は現在加圧水型原子炉(PWR)ではどうなるのか、を調査している。これもまとまり次第全面公開する予定である。


◎このレポートでは、

最大の教訓は津波等による想定が「甘かった」事ではなく、どんなことが起きても過酷事故は起こさないという「設計思想が無かった」事である。 いくら想定を高くしても、それ以上の事象は発生しうる。と、示している。

 おこがましいが、切実な我れの半世紀を捧げた生産現場での教訓は、
『「事故0」という結果はあり得ないと言う事実であった』ある職場にまだ起きていないとすれば、それは単にまだ起きてないだけで何れ事実として遭遇しなければならないのだ。 勿論我れ個人の経験を記しただけである。

 原発に関しては、残る現在稼働中の設備には、このチームの提言の如く必要な施策を成し、且つ最終的には「原発の廃止」以外には「自然災害」にしても忌まわしい「人災」にしても「事故0」はあり得ない。

 国民の多くには、この考えが浸透しており、そのコンセンサスとしての「脱原発」70%を示している。政府は、今回の「原発事故」の重大さと、国民の思いを更に重く受け止めて総理にはしっかり舵を取りをして頂きたい。 「keniti3545」